近代サッカーの戦術で重要な役割を担う「ボランチ」
近代サッカーの戦術で重要な役割を担う「ボランチ」
サッカー発祥の地はイギリスでFIFAのルールなどはすべて英語で記載されますが、今や世界中に広まったサッカーということもあって多言語も使われるようになりました。
非英語でありながらよく使われるサッカー用語のひとつに、「ボランチ」があります。これはポルトガル語で「ハンドル」もしくは「舵取り」と言う意味です。
つまり、試合中にボールをコントロールして、攻守の切り替えや絶妙なパスを送る役割を果たすMFが、ボランチと呼ばれます。堅く言えば守備的MFですが、ボランチは、最近使われ出した「アンカー」と近似しているにしても、やや異なる動きをすると考えられます。
しばしば司令塔とも呼ばれるボランチについて、ここで詳しく解説をしたいと思います。なお、ボランチはポジションのことではないことと、1人あるいはダブルボランチの2人、トリプルボランチの3人のMFがいることは、最初に押さえておきましょう。
先を読むセンスが不可欠なボランチ
サッカー選手のポジション名は前列から、FW、MF、DF、GKとなります。この中には、どこにもボランチというポジション名はありません。ボランチはMFの選手で1人か2人、多い時には3人のMFがボランチの仕事をします。例えば、「4-2-3-1」のフォーメーションだと、ボランチに相当する選手は2人いることになります。
おなじみFIFA日本代表チームでは、しばしばMFの遠藤保仁選手と長谷部誠選手がダブルボランチを務めています。FIFA国際Aマッチでこの2人が起用されることが多いので、その時のふたりの動きやボールコントロールを見ればボランチの役割や動きが分かりやすいと思います。
ボールコントロールの起点になるボランチは、ゲーム進行の中心的な役割を持っていますから、当然ながら相手チームはボランチを厳しくマークします。相手の厳しいマークを避けながら味方の前列にボールを送るには、先を読むセンスが不可欠で、それと同時にFWの選手にサインを送り、ボールをその選手にドンピシャのタイミングで送るのは、かなり高度なボールコントロールの技術が必要になります。
さらに、攻撃の時間帯にはボランチも思い切って上がり、時にはミドルシュートを放つこともあります。またその逆に、味方のDFの人数が少ないと感じた時には下がって、DF同様の動きをします。
ほかにはDFと連携しつつ、相手選手の位置を確認して相手選手をオフサイドにおびき出したりもします。
なお、ボランチと呼ばれるMF選手の役割は、監督の考え次第で変わってきますので、いろいろなタイプのボランチがいます。才能があるCB(センターバック)などはDFの役割と同時にボランチの役割が与えられることもあります。
Jリーグの有名なボランチ5選手
ボランチの概要を解説したところで、ここではもっと分かりやすいように実在する選手名を出してボランチの世界を掘り下げてみましょう。
ここでは有名な5人のボランチに絞りましたが、当然ほかにも優秀なボランチがいますし、紹介は順不同です。
稲本潤一選手
ボランチの天才と言えるでしょう。攻撃面では、思い切ってダイナミックかつセンス良いパスを出します。守備の面では、強いフィジカルで、激しくプレッシャーをかけるプレースタイルです。印象に残るのは、2002年W杯での、稲本選手のゴールパフォーマンスです。
遠藤保仁選手
どちらかと言えば遅咲きのイメージがありますが、2002年からA代表に招集され、今では日本代表国際Aマッチ最多出場記録保持者です。
最初からボランチの選手ではありませんが、ボランチとしての正確なパスセンス、ボールを相手選手に奪われない強さは定評があります。
長谷部誠選手
現在の日本代表キャプテンを務めています。どのFIFA日本代表監督からも信頼されている長谷部選手が高く評価されるのは、その戦術の高い理解力でしょう。守備の時の身体の入れ方やプレスも定評がある得難いボランチのひとりです。
細貝萌選手
若手のボランチとして有望株で、中盤での守備的なプレイは、そのセンスの良さをうかがうことができます。今は海外組としてドイツのブンデスリーガで活躍していて、その才能は高い評価を得ています。
明神智和選手
今は少し引っ込んだ感じですが、フィリップ・トルシエ監督当時の日本代表として活躍をした名ボランチです。ちなみに明神選手は、2000年シドニー五輪サッカー競技でU-23日本代表として活躍し、2002年日韓共催W杯では日本代表の決勝トーナメント進出に貢献しました。
ほかに名前をあげると、山口蛍選手(セレッソ大阪)や柴崎岳選手(鹿島アントラーズ)なども注目したい人材です。目を海外に向けると、世界最高のボランチはギュンドアン(ボルシア・ドルトムント)だと言う声もあります。
ボランチの動きを見るとサッカーのゲームがよく分かる
サッカー観戦ではイレブンの全員の動きを目で追わなければなりませんが、とりわけボランチの役目をするMFの動きに注目すると、色々な発見があると思います。
まず、ボランチが相手選手に激しいマークをされているのが良く分かります。見ているとパスの出しどころが無いような局面でも、あせらずにボールをコントロールして、いきなり相手サイドの左右にいる味方のFWにボールを送ります。そして、それを受けたFWが際どい角度からシュートを打った瞬間にはボランチは相手陣地近くまで攻め込んでいます。
冒頭でも少し触れましたが、最近しばしば聞かれる言葉に「アンカー」があります。これは英語では碇(いかり)のことです。アンカーとは、MFの中でDFの手前に位置する選手で、いわばサブボランチとも言え、今後主流になるサッカーの戦術では従来からのボランチ同様に重要な役割を担うことになりそうです。
余談ですが、サッカーのサブ選手がベンチで羽織っているもの、何だと思いますか?そう、ビブスです。最近ではビブスの通販ショップもできていて、サッカー以外にも色々なシーンで使われるようになっています。こちらもいつか記事にしたいと思います。