サッカーのレッドカードと伝説の珍事
サッカーのレッドカードと伝説の珍事
レッドカードは試合をコントロールする目的で出されます。
サッカーの試合が白熱すると、ラフプレーが起きることがありますよね。
ラフプレーが悪質なものだと、それを見た審判がレッドカードを選手に提示し、レッドカードを請けた選手は退場処分になります。
暴力行為など、誰が見ても「あれはダメだろう」と思えるようなプレーなら不思議に思いませんが、何事もないように見える時にふいに笛が鳴り、レッドカードを掲げて選手に突きつけることがあります。
こうした時に多いのは、紳士のスポーツであるサッカーで「紳士的でない行為をした」という理由ですが、テレビ観戦などではちょっと伝わりにくいですよね。
今回は、意外に奥が深いサッカーとレッドカードにまつわるうんちくやお話を、いくつかご紹介します。
■レッドカードの仕様
レッドカードはスポーツ用品店などで販売されていて、縦10.5cm 横7.5cmのプラスチック製のものが一般的です。
表面の赤色は蛍光色で、裏面にはカードを提示した選手の背番号と提示理由および時間が記入できるシールが貼り付けられています。
■レッドカードはたくさんのスポーツにある
冒頭で述べたように、悪質な反則を行った選手に対し、審判が退場を言い渡す際に使用する赤色のカードがレッドカードです。このレッドカード、実はサッカー特有のものではなく、ラグビーやバレーボール、アイスホッケーなどでも使用されています。
サッカー、ラグビー、アイスホッケーでは細かな条件は違ってきますが、レッドカードが退場を意味することは変わりません。一方、バレーボールのレッドカードは「提示されたチームの相手側に1点を追加、サーブ権が移る」というペナルティになっています。
■レッドカードが適用される反則や不正
サッカーで審判がレッドカードを提示するのは、提示された選手が「重大な反則や不正行為を行った」と判断されたからです。
そして、何が「重大な反則や不正行為」に値するかは、国際的に使われているサッカーのルールに基づきます。
以下に反則の条件を列記していますが、提示するかどうかはあくまでも審判(主審)の観点によります。
1.著しい不正
2.暴力行為
3.故意につばを吐く
4.決定的な場面で手を使って相手ボールを阻止
5.フリーキック、ペナルティーキックに相当する反則で相手ボールを阻止
6.侮辱行為
7.試合中にイエローカードを2回提示される
以上の7項目がレッドカードの対象になります。
レッドカードを提示された選手は退場となり、欠員を控えの選手で補充できない上、原則としてベンチに残ることすら許されません。
ちなみに、11人でプレーをするサッカーで1チームに合計5枚のレッドカードが提示されると選手の数が6人になってしまいます。
ここまでチームメンバーが減ってしまうと試合続行不可能とみなされ、メンバーの足りないチームが敗戦扱いとされたり、没収試合になることもあります。
非常に稀ですが、試合終了後やベンチにいる控え選手(つまりピッチにいない選手)がレッドカードを提示されて退場処分になるケースもあります。
アルゼンチン5部のことですが試合終了後に乱闘騒ぎが起きたため、両チームの登録メンバー全員と用具係の計37名にレッドカードが出されるという珍事がありました。
■レッドカードにまつわる珍事
サッカーの試合でイエローカード(警告)が提示されるシーンは珍しくありませんね。
しかし、レッドカードを提示する試合はそれほど多くありません。
警告で済むような反則がほとんどで、即退場となるような重大な行為をする選手はあまりいないということです。
しかし世界は広く、レッドカードが大量に飛び交う試合や、試合開始直後に選手が退場となる試合もあるのです。
W杯史上最多カード
2006年FIFAドイツワールドカップのポルトガルVSオランダ戦で、歴史的な珍事が起きました。
世界屈指の強豪国同士の試合ということもあり、どちらが勝ってもおかしくない好ゲームが期待されていました。
しかし、なんとこの試合「W杯史上、最多となる4枚のレッドカードと16枚のイエローカードが提示される」大荒れの試合になってしまったのです。
試合が大荒れになってしまった理由としては、警告を出しやすいタイプの主審であったこと、オランダの選手に若手が多く、得点への焦りや警告が乱発される雰囲気に呑まれ強引なプレーが多くなってしまったこと、ポルトガル側も冷静さを失ってラフプレーにラフプレーで返したこと、ポルトガルが先制した1点を守る戦術に出たため、オランダが焦りからよりラフプレーに頼ってしまうようになったこと、などが挙げられます。
世界最早カード
2008年イングランドのアマチュアリーグにおける試合で、なんと試合開始から3秒という、世界最早レッドカード記録が生まれました。
試合開始から3秒でレッドカードを提示されたのはチッペナム・タウンに所属するデヴィッド・パット選手。
詳細な理由は公表されていませんが、ホイッスルが吹かれる前に相手チームから挑発を受けたパット選手が、ホイッスル直後に相手チームの選手を突き飛ばしたからとされています。
ちなみに、日本での最早レッドカード記録は、2009年、当時J2の東京ヴェルディに所属していた菅原 智 選手が持つ試合開始から9秒という記録です。
ヴェルディのキックオフではじまった試合直後、バックパスを奪おうと飛び込んできたサガン鳥栖の選手を、菅原選手が手を使って倒したためレッドカードを提示されました。
■番外編:グリーンカード
番外編として、サッカーにはグリーンカードというものがあることを付け加えておきます。
グリーンカードはフェアプレーやフェアーマナーの選手に主審が提示するカードです。
その判断はさまざまですが、例えばどのような劣勢でもフェアに最後まで全力でプレーをしたと認められる場合や、試合中に相手を倒した際に相手を起こして謝り握手をする、試合中に乱闘になりそうな時になだめ役となった場合など、その選手の行動が紳士の模範だと判断された時にグリーンカードが提示されます。
あまり世の中で知られていませんが、紳士の国イングランドで生まれたとされるサッカーらしい風習ですね。
■審判が試合を作る
どういった反則行為がイエローカードやレッドカードに相当するかは、審判(主審)が主観で判断をしますから、当然、見落とすことや偏った判定と思われるような場面だってあります。
誤審やカードの乱発などは目立つため記憶に残りがちですが、両チームに対して公正な基準で反則を取り、ヒートアップした選手達をなだめ、暴力行為に走る選手達をレッドカードという武器で牽制する。
どれもサッカーを試合として成立させるために欠かせない役割で、ほとんどの試合では厳しい訓練を受けた審判がきちんとしたジャッジで試合をコントロールしていることを忘れてはいけません。
素晴らしいジャッジをした審判にグリーンカードを贈る、そんな習慣があっても面白いかもしれませんね。