サッカーでは特殊なポジションのゴールキーパー。深堀りすると予想以上に特殊づくし!
サッカーでは特殊なポジションのゴールキーパー。深堀りすると予想以上に特殊づくし!
あらゆるサッカー関係者の中で、「ゴール!」という叫び声を一番聞きたくないのはゴールキーパーでしょう。どのような状況でも、この声を阻止するためにゴールマウスを守るのがゴールキーパーの役割だからです。しかし、ゴールキーパーが相手のシュートを阻止するのと同様に、相手の選手はシュートでゴールを狙ってきます。それがサッカーのシンプルかつ最大のゲーム性ですよね。
ゴールキーパーは11人の選手の中でただ一人だけ手でボールに触れることが許されており、味方のゴールエリアを守備範囲にして相手選手のシュートを阻止することに専念するポジションです。サッカーの守備を担う一番の大役であり、サッカーにおいてゴールキーパーが守護神と呼ばれる所以です。
サッカー通でない人であっても、誰もが知っているゴールキーパーについて、その奥深い世界を覗いてみることにしましょう。
サッカー誕生から存在し続けるゴールキーパーという特殊なポジション
サッカーでのゴールキーパー(Goal Keeper)は、ピッチ内の両チームに1人ずつだけ置かれ、11人の選手の中で唯一人スローイン以外でも手でボールを扱うことが許されている特殊なポジションです。略してGKとも呼ばれるゴールキーパーは、フォワードやミッドフィールダー、ディフェンダーなどの全ポジションの中で最も現役期間が長く、多くの選手は40代始めまで現役でプレーをしています。その理由は、他のポジションのように試合でピッチ内を走り回る必要はなく、身体的な負担が他のポジションよりは軽いためと言われています。
また、ピッチ全体を見渡すことができるので、味方の選手にポジショニングの指示を出したり、PK戦などでは相手選手のシュートコースを読むことに神経を集中する重責も担っています。
サッカーは戦術面でさまざまな変化があり、新たに作り出されたポジションがある一方で、消えたポジションもありますが、ゴールキーパーはサッカーの規則が確立された時から存在している伝統あるポジションです。
ちなみに、当初の競技規則ではゴールキーパーはピッチの自陣のどこででもボールを手で扱うことが許されていましたが、規則が1912年に改訂され、ゴールキーパーが手を使うことができる範囲はペナルティエリア内に制限されました。
ゴールキーパーに求められる能力と役割
1992年に国際サッカー評議会が競技規則を改訂したため、味方から意図的に足でバックパスされたボールを手で扱うことが禁止されるようになりました(バックパス・ルール)。これにより、ゴールキーパーは手を使わずに足でボールを扱うフィールドプレーヤーとしての能力も求められるようになりました。ただし、あくまでもゴールキーパーはペナルティエリア内では手足を使ってゴールにボールを入れさせないのが本業であり、これは今も昔も変わっていません。
なお、試合終了間際に同点の場合や、1点リードされている場面などでは、ゴールキーパーも攻撃に参加することがありますが、これはセットプレーの場合に限られ、ゴール前での攻撃人数を増やす目的の配置です。世界中のプロリーグを見ているとまれにこのようなシーンが見られ、今までに実際にゴールを挙げたゴールキーパーも少なくありません。
身体能力の面では、シュートに対して瞬時に反応できる動体視力と反射神経、瞬発力が第一に求められます。また、ハイボールを処理するために、一般的には身長が高い方が有利とされ、さらに、ゴール前での混戦では相手選手に競り負けないフィジカルの強靱さと頑丈さも必要になります。
中には意外なものも?サッカーのゴールキーパーに関する競技規定
サッカーのゴールキーパーに関する協議規定は、いくつかの条項や通達に散見されます。それらをチェックしてみましょう!
・第3条「競技者の数」
チームを構成する者の内1人だけゴールキーパーを置かなければならないと規定されています。
・第4条「競技者の用具」
ゴールキーパーは他のフィールドプレーヤーおよびレフェリーと見分けが付くように、異なる色のユニフォームを着用することが義務付けられています。
・第12条「反則と不正行為」
ここではゴールキーパーによる反則を規定していて、相手にフリーキックが与えられる行為としていくつかの規定があります。なお、これらの行為はたとえペナルティエリア内であっても許されていません。
(1)ボールを6秒以上手で保持すること
文字通り、ボールを手に持った状態で6秒以上経過すると反則になります。
(2)保持していたボールを離してから、他の競技者が触れる前に再び手で触ること
こちらも文字通りですが、一度バウンドさせたボールをつかんだ場合はボールを離したことにはならず、反則にはなりません。
(3)味方のプレーヤーからキックで返されたボール(バックパス)に手で触れること
味方のプレーヤーからのバックパスやスローインで返されたボールは手で触れることができません。頭、ひざ、胸などで返されたボールであればゴールキーパーは手で触れることが出来ます
ゴールキーパーは手でボールに触れることでボールをゴールに入れさせない役割を担っています。したがって、ゴールを狙う相手選手とのボディーコンタクトに対して、しばしば無防備になります。このため、ゴールキーパーに対する反則は厳しく取られる傾向があります。また、ゴールキーパーが何らかの理由で不在になった場合に備えて、一人以上のゴールキーパーが控えとしてベンチに配置されることが一般的です。
ゴールキーパーがレッドカードで退場処分となった時には、ルール上、必ず一人はゴールキーパーを置かなければならないため、フィールドプレーヤーと控えゴールキーパーを交代させなければならず、必要な選手の交代枠を使うことになるので、ゴールキーパーの退場はフィールドプレーヤー以上に厳しいものになります。また、キーパーが怪我をした際は、フィールド上で治療が行われ、その間プレーは停止されます。この間に要した時間はアディショナルタイムに加算されます。
余談ではありますが、日本代表の長谷部選手がVfLヴォルフスブルクに在籍していた時代、ヴォルフスブルクが交代枠を使い切った状態でGKが退場してしまったため、器用でユーティリティに優れる長谷部選手が急遽GKを務めたことがあります。奇しくも欧州5大リーグで日本人がGKを務めた初めての出来事になりました。
いかがですか?改めて言葉にするとナルホドと思うものや、意外に感じた規定などもあるのではないでしょうか。
ポジションの特性上、非常に厳しいゴールキーパーのポジション争い
ゴールキーパーは他のフィールドプレーヤーと比較すると極めて専門性が強いポジションで、しかもピッチに立てるのはチームで1人だけです。しかも体力の消耗の少ないポジションのため怪我などのアクシデントが起きない限り途中出場する機会は滅多に与えられません。そのためクラブチームや代表チームではチーム内でのポジション争いは熾烈を極め、ひとたびポジションを失えば、挽回のチャンスがなかなか巡ってきません。特に第3・第4番手以下だとベンチ入ることもできないという過酷なポジションです。
当然、正ゴールキーパー以外はプレーを目にできる機会は少ないですが、それぞれのプレーヤーによって、シュートを防ぐことが上手かったり、ロングスローやロングパスを正確に出すことができたり、足を使って他のプレーヤーとパス交換に参加することが得意であったり、PK戦の読み合いに無類の強さを誇ったりと、特色が見えやすいポジションです。
有名なところでは、2014年のワールドカップブラジル大会の準々決勝オランダ代表vsコスタリカ代表、90分では勝負がつかずPK戦になりそうな状態でした。後半アディショナルタイムに突入直後、オランダ代表はなんとGKを交代。正GKのシレッセン選手はPKが苦手なことで知られており、反射神経と瞬発力に優れた控えGKのティム・クルル選手にPKを戦わせるという策に出ました。これが功を奏しクルル選手は2本のシュートを止める大活躍を見せ、オランダ代表の準決勝進出への立役者となりました。
正GKはもちろん、控えの選手にも様々な特徴やドラマがあるこの魅力的なポジション。この機会にちょっと調べてみるのはいかがでしょうか。