サッカーの守備を受け持つ重要ポジション、ディフェンダーの幅広い役割
サッカーの守備を受け持つ重要ポジション、ディフェンダーの幅広い役割
サッカーの試合で目立つのは、ピッチを走り回り相手ゴールにシュートを打つフォワードや、絶妙なパスを出すミッドフィールダーです。その一方で、その後ろにポジショニングをとるディフェンダー(DF)はあまり目立ちません。
逆に言えばディフェンダーの動きが目立つようだと味方チームがピンチの時ということですから、チームの勝利を考えるとあまり目立たない方が良いのかも知れません。しかし、目立たないからといって重要でないポジションなどではなく、むしろ1点を争うことが多いサッカーではディフェンダーの役目は極めて重要です。
Jリーグには優秀なディフェンダーが次から次へと誕生していて、フォワードやミッドフィールダーの選手同様に多くのサポーターから熱い声援を受けています。
ここでは、サッカーにおけるディフェンダーの重要性と近代サッカーでの役割について述べていきます。
ディフェンダーのポジションは大きく2つに分かれる
ディフェンダーの主な役割はゴールキーパーの前にあたる最終ラインで主に守備を行うもので、略してDFと呼ばれます。そしてこのDFのポジションは、センターバックとサイドバックの2つに分けることができます。
●センターバック
センターバックはディフェンスライン中央のゴール前方にいるDFで、4バック時の中央の2名(5バックでは3名)です。広義ではストッパーやスウィーパー、あるいはリベロも含みます。彼らの主な役割は主に相手チームのFWをマークし、相手の攻撃の最終段階を阻止することです。
一般的にはボールの奪取能力、ロングボールの処理能力、ポジショニングやプレーを選択する判断力、さらには相手選手にボディコンタクトで競り勝つ身体能力が必要になります。また、ディフェンスのラインコントロールもセンターバックに任されることが多く、守備において非常に大きな責任を負っています。
センターバックの選手はストッパーとスウィーパーに分けられ、ゾーンディフェンスでは状況に応じて両方の役割をこなします。4バックの戦術では中央の2人がセンターバックでゾーンディフェンスを行い、3バックでは全員がセンターバックで、2ストッパー1スウィーパーとするのが一般的です。
・ストッパーの役割
ストッパーとは相手FWの選手を1対1でマークし、自由にシュートを打たせないことが役割です。したがって、ドリブルで相手選手に抜かれない、空中戦で競り負けないといった対人的な能力が求められ、日本の選手では、空中戦に強いタイプでは中澤佑二選手、ドリブラーやスピードを生かすFWに強いタイプでは坪井慶介選手が有名です。
・スウィーパーの役割
スウィーパーはストッパーの選手が抜かれたときのカバーリングや2列目から飛び出してきたMFの選手に対する守備を行うポジションです。近年の戦術ではディフェンスラインをフラットに保ちラインの高さをコントロールすることが重要視されるので、ストッパーと横一列になる場合が多いのが特徴です。スイーパーとしては宮本恒靖選手や田中誠選手が有名です。
得点力の有るセンターバックの選手の場合、接戦の試合の終盤に同点あるいは勝ち越しのゴールを狙ってDFも前線に上がる「パワープレー」という戦法で攻撃に参加する場合があります。守備だけに徹しているわけではないのもディフェンダーの面白いところです。また、センターバックには高さのある選手が多いことから、ヘディングの強さを攻撃に活かすためにコーナーキックなどのセットプレーではターゲットマンとしてディフェンダーが相手ゴール前まで上がることがしばしば見られます。
●サイドバック
サイドバックは4バック又は5バックの左右両サイドに位置するディフェンダーのことで、サイドでの守備が主な役割になります。攻撃時には中盤の選手を追い越して前線に駆け上がり、ドリブルで切り込んだりクロスボールを上げることも求められます。そのため、攻撃に参加するタイミングを見極める判断力、ピッチを縦に走り回る体力、スピード、さらにはサイドを突破するドリブル技術やクロスを上げる精度の高いキックも求められます。
この点では、MFのウィングバックの選手と似た役割があり、両方のポジションをこなせる選手が多く見られます。また主にサイドでプレーするので、右サイドなら右利き、左サイドなら左利きが有利ですが、当然、両方の足を同様に使える方が有利です。日本の選手では長友佑都選手や内田篤人選手、ダブル酒井と呼ばれる酒井宏樹選手と酒井高徳選手などが有名です。
ひとつ補足しますと、よく使われている「サイドバック」は和製英語で、英語ではフルバックと呼びます。
ディフェンダーの枠に収まらない役割も
マンツーマンディフェンスが主流だった時代に、より自由なポジショニングと攻撃的な役割を受け持つディフェンダーとしてリベロというポジションがしばしば見られました。ゾーンディフェンスが主流となった近年にはあまり見られなくなりましたが、今でもディフェンダーでありながら比較的自由なポジショニングをする選手や攻撃参加の頻度が高い選手が、リベロとして扱われたり、リベロ的な動きをする選手として評されることがあります。
●リベロ
リベロとはイタリア語で「自由」を意味する言葉です。リベロはスウィーパーの一種でありながら、自由にポジショニングをとって積極的に攻撃参加するディフェンダーという意味を持った呼び名です。攻撃に参加することでチームに大きく貢献したリベロとしては、ドイツのフランツ・ベッケンバウアーが特に有名で、他にはロナルド・クーマンやフランコ・バレージ、ガエターノ・シレアやダニエル・パサレラなども有名です。日本では福西崇史選手が一時期リベロを務めていました。
ディフェンダーの位置取りの変化に着目
サッカー戦術の進化と共に、ディフェンダーに求められる役割は相手やボールを止めることだけでなく、パス交換に参加して攻撃を組み立てたり、正確なロングパスで決定機を演出したり、ロングシュートやヘディングで相手ゴールを脅かしたりと、非常に幅広くなってきました。一見、目立たないディフェンダー陣もよくよく見てみると実に様々な局面で顔を出し、攻防に絡んでいることが分かると思います。
サッカー観戦の際は、ディフェンダーの位置取りの変化や攻防の切り替えの際にどの選手を経由してボールが回されているかなどに注目してみると、違った楽しみ方ができるかもしれませんね。