イングランド?イタリア?中国?諸説入り交じるサッカーの起源3説
イングランド?イタリア?中国?諸説入り交じるサッカーの起源3説
今や世界的なスポーツとして億単位の競技人口を誇るサッカーですが、その起源については明確な定義がなく、今も諸説が入り交じっている状況です。主な説はイングランド説、イタリア説、そして中国説の3つです。
イングランドとイタリアについては今もサッカーが盛んな国なので意外ではありませんが、中国にも起源の説があるというのは、少々意外に感じる人も多いようです。
そのシンプルさから世界で最も古いスポーツだと指摘する意見もあるサッカーの、代表的な起源説をご紹介しましょう。
最も有名でグロい噂もつきまとうイングランド説
サッカーの数ある起源説の中で最も有名なのが、イングランド説です。
時代は8世紀頃にまでさかのぼり、その当時は戦争に勝利をすると相手の将軍の首を切り取るのが勝利の証しとされていました。今となってはグロテスクな風習ですが、それが当たり前だったのが中世の世界です。
戦争に勝利したイングランドの兵士たちが切り落とした敵将の首を蹴って遊ぶことが勝利の雄叫びとなっていたことから、やがて首がボールに代わってフットボールに変化していったという説です。
首を蹴っていたのが本当に起源になったのかどうかは特に証拠があるわけではないので意見の分かれるところですが、古くからイングランドでは庶民がボールを蹴り合う遊びに興じていたことはさまざまな記録に残っています。ボールを蹴りながら走る、今でいうドリブルで競争をしたり、時には手を使っても良いというルールがあるなど、ほとんどルールに関係なくボールと戯れるという雰囲気のスポーツだったようです。
カルチョというが近代サッカーに酷似
同じく8世紀頃、イタリアにはカルチョという遊びがありました。これは今でも残っているとても古い遊びで、サッカーの勝敗にお金を賭けることを指す「トトカルチョ」という言葉の語源にもなっています。
イングランドで広く親しまれていた古代サッカーと大きく異なるのは、一定の定められたスペースの中で遊んでいたことや、参加人数を決めて同じ条件で闘うことを定めるなど、ルールを取り決めることによってゲーム性を持たせていた点です。その意味では、イタリア起源のカルチョのほうが近代サッカーに近い存在だと言えます。
カルチョにルールという要素が持ち込まれたのは、この遊びがイタリアの都市部で始まったことに関係があります。都市部では広いスペースを確保するのが難しく、その限られたスペースでボール遊びをすることでルールを取り決める面白さに気づいたのではないかとされています。
FIFAが認定する最古のサッカー、蹴鞠
イングランド、イタリアという今もサッカーが盛んな国とは違い、最近でこそプロサッカーリーグがあるもののサッカーとの縁が遠いように感じるのが中国起源説です。
中国とサッカーが直接結びつく人は少ないと思いますが、サッカーに類似した遊びで最も古いものは古代中国の蹴鞠であるということをFIFAも認めています。
この蹴鞠、日本では「けまり」と呼ばれ、平安時代には貴族の遊びとして定着したものです。中国版の蹴鞠は「しゅうきく」と呼ばれるもので、日本の蹴鞠に影響を与えたルーツであるとされています。
特に古文書などがあるわけではないのですが、日本などに伝わった時期を考えるとそれよりも古くから蹴鞠があったことから、FIFAではそれが最古のサッカーではないかと見ているようです。この蹴鞠については中国自身も起源ではないかと見ていて、山東省内に世界のサッカー発祥地があると認定しています。
もちろんこれは近代サッカーとは性格が大きく異なるもので、足でボールに近い形のものを蹴って遊ぶという行為がここで発祥したのではないかという意味です。
諸説が入り乱れるのはサッカーが人気スポーツである証し
イングランド説が最も有効で、それに次ぐのがイタリア説、そして大穴と目されているもののFIFAが認めているのが中国説というのがサッカーの起源に関する勢力図です。
他にもサッカー起源説はいくつかあって、その中にはある程度真実みがあるものもありますが、大半は眉唾ものの起源説です。紀元前にもボールのように球形をしたものを蹴っていた様子がいくつかの遺跡などで分かっていますが、これがスポーツだったのかどうかは分かっていません。
イングランド説が有力になっているのは特に明確な証拠があるというわけではなく、首を蹴り合っていたという目立ちやすい噂があること、そして今もイングランドはサッカーの名門国であることが関係しているように思われます。
いずれにしてもサッカーの起源があるとされる国が世界のあちこちにあって、これだけ諸説が入り乱れているのは、サッカーがそれだけ世界的に見てもメジャーなスポーツであるからに他なりません。今後もサッカーの起源については全く新しい説が登場するかも知れませんが、そうやって昔の人たちがサッカーに近い遊びに興じていたことに思いを馳せるのも、サッカーのひとつの楽しみ方ではないでしょうか。