サッカーで勝敗を大きく左右するフォーメーションを科学する
サッカーで勝敗を大きく左右するフォーメーションを科学する
日本の選手が蹴り込んだボールがゴールネットを揺らし、「ゴーール!!!」と、実況アナウンサーがマイクそっちのけで叫ぶ時は、サッカー場でもテレビの前でも、全日本チームの勝利を信じている人のアドレナリンが大量に分泌される瞬間です。
このゴールを生み出すまでの、とても重要なプロセスがサッカーのフォーメーションです。フォーメーション (Formation)とは、戦術の基本であり、11人いるサッカー選手の配置のことです。
フォーメーションは、11人の選手全体のポジショニングを指す場合と、試合中の特定のシーンでの何人かの配置を指すこともあり、時にはシステムという言葉で表現されることもあります。
長いサッカーの歴史の中で、今もなお無敵のフォーメーションというものは存在しません。11人の選手をいかに効果的に配置して戦術を実現するか。そんな奥の深いフォーメーションの世界を覗いてみましょう。
サッカー フォーメーションは10人の選手のポジションで構成される
サッカーのポジションは、ゴールキーパー(GK)、ディフェンダー(DF、バックス)、ミッドフィールダー(MF、ハーフ)、フォワード(FW、トップ)で構成されます。GKは必ず一人置かなければならないというルールがありますが、残りの10人の選手をどう配置するかは自由で、これがフォーメーションを決める監督の、大きな腕の見せ所になります。
DFに比重を置けば守備的なサッカーになり、FWに比重を置けば、攻撃的なサッカーになります。
ただし、フォーメーションでは、GKを除いた10人の選手のポジションに必ずしも決まりはなく、状況次第で自由かつ柔軟にポジションを変化することもサッカーの醍醐味です。
フォーメーションはどのように表記される?
サッカーの試合前に紹介される、「3-4-1-2」、「4-2-3-1」などがフォーメーションです。この数字は、DF-MF-FWの順番で、そのポジションに配置される選手の数を示しています。例えば、「3-4-1-2」は、DFが3人、MFが4人+1人、FW2人ということです。
これが、「4-2-3-1」ではDFが4人、MFが2人+3人、FWが1人で、1トップという布陣です。
ちなみに、GKは含まれていませんが、ヨーロッパでは「1-4-4-2」(1GK-4DF-4MF-2FW)といようにGKを含め表記する習わしとなっており、このあたりには洋の東西による文化の違いを垣間見ることができます。
時代で変わるフォーメーションの数々
数字で表すフォーメーションとは別に、選手のポジショニングから呼び名がつけられたフォーメーションもあります。
古い時代にあったVフォーメーションとは、「2-3-5」で、ゴールキーパーを含めて、そのポジショニングを見ると、Vの文字型に見えることからこう呼ばれました。同様にWMフォーメーションとは、「3-2-5」の配置のことです。「3-2」が「W」、「5」が[M]です。
時代が進んで1950年代になると、ヨーロッパではVフォーメーションが多く採用されていましたが、「2-3-5」を進化させた「4-2-4」が南米で始まりました。
この「4-2-4」は1958年のワールドカップスウェーデン大会で優勝したブラジル代表に採用され一時代を築いたことで有名になりました。
その後のフォーメーションの変遷を見ますと、1960年代 には、「4-3-3」 が多くのチームで採用され、その後20年にわたり「4-2-4」とともに世界の主流となりました。
1970年代になると、4バックの1人が攻守にわたってゲームをコントロールする攻撃的なリベロが生まれました。ここで特筆すべきは、このフォーメーションはベッケンバウアーという鬼才の存在があって実現したことです。
1980年代前半は、「4-4-2」が脚光をあびましたが、1982年のスペインW杯では黄金のカルテットのブラジルが「4-4-2」を採用しています。
1980年代後半は「3-5-2」、1990年代前半は、「4-4-2」または「4-3-3」、1990年代後半には「4-3-3」が、そして、2000年代になると、「4-5-1」あるいは「4-2-3-1」が誕生し、近年には、0トップ、数字で表現すると「4-6-0」のフォーメーションが登場しました。
日本代表歴代監督の基本フォーメーション変遷
それでは、主な日本代表監督のフォーメーションも見てみましょう。アギーレ監督の任期途中解任によって急遽日本代表監督に就任した、ヴァヒド・ハリルホジッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)の基本フォーメーションは「4-2-3-1」です。これには「ハリルジャパン」の絶対に勝ちにいくという強い願望が感じられます。前任者であるハビエル・アギーレ(メキシコ)は、「4-3-3 」または「4-2-3-1」でしたが、ハリルジャパンとそれほどの違いはありません。
ザックジャパンの愛称でサッカーを一段と盛り上げたアルベルト・ザッケローニ(イタリア)は、好んで「4-2-3-1 」または「3-4-3」を採用しています。
岡田武史(日本)は2回監督を務めていますが、「4-2-3-1」または「4-1-4-1」、「4-2-2-2」
あるいは、「3-4-1-2 」または「4-3-1-2」、「4-2-2-2」とかなり工夫を重ねていました。ちなみに全戦績は50試合で26勝・11敗・13分でした。
その前は、イビチャ・オシム(ボスニア・ヘルツェゴビナ)の「4-2-3-1」、「4-2-2-2」または「3-3-2-2」、ジーコ(ブラジル)の「4-2-2-2」、「3-4-1-2」または 「3-4-2-1」という布陣が展開されていました。
フィリップ・トルシエ(フランス)のフォーメーションは「3-4-1-2」で、トルシェの在任期間は1998年10月~2002年6月でしたが、2000年のアジア・カップ優勝をはじめ、2001FIFAコンフェデレーションカップ準優勝、2002FIFAワールドカップ日韓大会で、ベスト16という好成績を収めています。これは当時の日本代表チームにフォーメーションがマッチしていたと見ることもできます。