勝ちたいからこそ熱くなる。熱くなれば乱闘も起きる?サッカー史に残る2つの乱闘エピソード

2017年9月6日

勝ちたいからこそ熱くなる。熱くなれば乱闘も起きる?サッカー史に残る2つの乱闘エピソード

プロスポーツには1対1で闘うボクシングもあれば、9人対9人の選手で試合をするプロ野球、11人対11人の選手で試合をするプロサッカーなどがあります。プロであれば当然、どのスポーツでも選手の勝ちたいという気持ちはとても強く、チームとしてプレーをするプロ野球やプロサッカーでは、しばしば試合中に興奮の度合いが行き過ぎると選手同士がにらみ合うシーンが見られます。
にらみ合い程度であればしばしば見られることですが、稀にこれが「ボクシング」にまで発展し、それが他の選手やスタッフをも巻き込んで乱闘が勃発することがあります。レフェリーや周囲が冷静に乱闘を止めれば大事には至りませんが、サッカーの場合は、どちらか一方、または双方がレッドカードとなります。
火事と喧嘩は江戸の華と言われましたが、ある意味では華とも言われてきたサッカーの乱闘について紹介していきたいと思います。

ラテン系の血が騒ぐ?ブラジルで起きた世紀の大乱闘

サッカーの試合では、ちょっとしたことから選手同士の小競り合いになるシーンがしばしば見られます。周囲の選手が止めに入って興奮している選手をなだめて沈静化するのがほとんどですが、ブラジル4部リーグで2014年4月6日に行なわれたポチグアルvsバラウナスの試合で起きたこの乱闘は荒れに荒れました。前代未聞と言われるこの世紀の大乱闘での退場者はなんと8人!いったいどんな乱闘だったのか、当時の映像を見ればその凄まじさがよく分かります。


【ポチグアルvsバラウナス 乱闘シーン】
※乱闘のはじまりは動画の約2分30秒あたりから。

ポチグアルとバラウナスはともに同じ街に本拠地を構えるクラブ。試合はいわゆるダービーマッチで、両チームの選手たちは気合い十分。試合の序盤から激しい争いが繰り広げられました。
ポチグアル、バラウナスともに1点を取り合い、2点目がホームのポチグアルに入りました。ゴールを決めた選手はサポーターのもとへ駆け寄り、喜びを分かち合っているかに見えますが、なんとこれがアウェイのバラウナス側の観客席だったのです。事もあろうに、ゴールを決めた選手達が相手チームのサポーターを挑発したのです。
これを見たバラウナスの選手たちは激怒!ゴールを決めたポチグアルの選手がセンターサークルへと戻ろうとすると、バラウナスの選手たちがその選手を取り囲み小競り合いが発生。ピッチ全体が不穏な雰囲気になりました。そして、仲間を小突かれたポチグアルの選手たちに怒りの火がついて、両チームの選手たちが入り乱れて大乱闘、あっと言う間に収拾がつかない事態になってしまったのです。さらに観客席からは発煙筒が投げられ、完全防備の警官隊が出動する騒ぎにまでなりました。
やっと乱闘が終わり、両チームの選手は落ち着きを取り戻しましたが、両チームのそれぞれ4人がレッドカードで退場することになりました。その結果11人対11人が7人対7人の戦いになり、最終的には乱闘前に勝ち越し点を奪ったポチグアルがそのまま2-1で勝利しました。
サッカーで選手が相手クラブチームのサポーターを挑発することが御法度なのは暗黙のルールなのですが、同じ街のライバル同士の一戦だっただけに「どうだ、やったぜ!」と言いたくなる選手の気持ちは分からないでもありません。
ところで、ここでサッカーのルールを見ますと、競技規則第3条に規定されている人数は本来11人対11人でやるものとし、7人未満(6人)の場合は競技を開始しないとなっていますので、ピッチには最低7人の選手がいることが条件になります。したがって、7人未満となった場合、通常、試合は中止になります。審判はそのことを知っていて試合が中止にならないギリギリの人数を残したのかもしれませんね。

不可解判定で乱闘寸前になった時に生まれた長谷部誠選手の名言

カタールで開催されたAFCアジアカップ2011で日本代表は、激戦を制して見事に優勝を果たしました。アジアカップの優勝トロフィーを掲げて日本代表イレブンの中央に収まったのはキャプテンの長谷部誠選手(MF)ですが、ここに至るまでの過程で、実はあわやというシーンがありました。
それは予選リーグの日本vsシリア戦でのレフェリーが下した疑惑の判定です。1点をリードしていた日本代表は、後半にペナルティエリア内でGKの川島永嗣選手と相手選手が接触。日本代表はオフサイドがあったと主張しましたが、受け入れられずにPKをとられてしまった上、川島選手はレッドカードで退場処分になってしまったのです。


【AFCアジアカップ2011日本vsシリア 問題のシーン】

日本代表イレブンやベンチのコーチングスタッフが主審に猛抗議をしましたが認められず、日本代表イレブンはこの判定に納得ができず主審に詰め寄りました。
しかし、日本代表キャプテンの長谷部誠選手は選手たちを主審から引き離し、落ち着くように説得してから主審に伝説的な一言を述べました。「あなたのために言う。大勢の人が見ているから、しっかりとしたレフェリングをしてくれ」
この長谷部選手の言葉が影響したかしないかは定かではありませんが、その後で日本代表もPKのチャンスを与えられ、このPKを本田圭佑選手が決めて、日本代表は2-1で、この激闘に勝利、日本代表をアジアカップ優勝に輝いたのです。
フェアプレーの鑑とも言える長谷部選手の態度ですが、全てのサッカー選手がこうであれば、目も当てられないようなサッカー乱闘は起きないと感じさせてくれるエピソードです。

いかがでしたか?もちろん、乱闘は認められる行為ではありませんが、「勝ちたい」と思う選手達の本気と本気がぶつかり合う、必死さや真剣さといったものが背景にあります。
そして、ヒートアップした選手達に流されない、長谷部選手のような本物のキャプテンシー。これも長谷部選手なりの「勝ちたい」という強い思いの表れでしょう。
そういった強い思いが作り上げる本物のドラマがあるからこそ、人はこれほどスポーツに魅力を感じるのかもしれませんね。